■圏内の生物にも変化

 さらに、報告書に添付された一連の招待論文では、温暖化によってセイウチや魚の行動に混乱が生じている状況が明らかにされている。

「海氷の減少は、セイウチの生息環境を劇的に変化させている。大型海洋哺乳類のセイウチは通常、繁殖、出産、餌探し、嵐や捕食動物からの避難などのための場所として海氷を利用している」と報告書は述べている。

 また「近年、多数のセイウチが、米アラスカ(Alaska)州北西部の陸地に移動することを余儀なくされている。航空調査を通じて記録されたこの行動により、群れの過密化や餌が見つかりにくいなどの問題が発生している。過密化は子どものセイウチを圧死させる原因ともなる」としている。

 気候変動により魚の生息地も移動している。

 報告書は「タラ、アカウオ、カレイなどの亜北極に生息する種類の魚が、北方の北極海に移動していること」を明らかにした。

 これらの魚の生息地移動は、見慣れない捕食魚の大群に直面する北極海の小型魚に、生き残りの問題をもたらしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN